ルツ記は文体の簡潔さや素朴な内容で読者の心を癒し、励まし、勇気と希望を与えることで時代を超えて賞賛されています。ナオミ、ルツ、ボアズという登場人物たちの物語は、神が普通の人々を祝福の中で使うことを示しています。著者や背景については簡単に触れ、著作の目的に関する見解を詳しく紹介します。

著者と著作年代

 本書自体の中に,誰がいつ書いたかの言及はないが,買い戻しの習慣が昔のことであったと説明されていることと(4:7),巻末にダビデの系図の記載があることから(4:18-22),ダピデの治世以前のものでないことは確かである.従って.ユダヤの伝承であるサムエル著者説も採ることは出来ない.ダビデ時代以後の誰かによって書かれたというのが無難な結論です.

士師時代は政治的暗黒や道徳的堕落、信仰の低下があった時代で、偶像礼拝や外敵の悩みがありましたが、著者は時代を評論せず、一家庭の物語を描く。時代に屈せず生きる平凡だが自由な人々の姿が愛情を込めて描かれている。著者も神の前で自由を知っていた人だと思われます。

ダビデの系図について、本書がその補完を目的としているという見方もある。また、ユダヤではレビラート婚や買い戻しの権利の律法があり、本書が律法遵守を勧める教育的効果を目的とするという意見もある。しかし、ボアズが動かされたのは律法遵守の精神ではなく、ルツの真実を見たり、主に導かれたからです。

本書の目的は、神の救いの証明である聖書の目的と同じである。実際に起こった出来事が記されており、その中で神が働いてナオミを慰め、ルツを祝福し、ボアズを用いられるのです。本書は特定の人物のためではなく、神のもとに避け所を求めるすべての人に豊かな報いを示すために書かれ、主なる神が讃えられています。

アウトラインは以下のようになります。

1。ルツ,エリメレク家の嫁となる(1:1-5

1)一家の移住(1-3

2)ルツの最初の結婚(4

3)相次ぐ不幸(5

2ルツの出立(1:6-22

1)ナオミの決断(614

2)ルツの決心(15-18

3)べツレヘム到着(19-22

3ルツの落ち穂拾い(2:123

1)ボアズの畑で(1-3

②出会い(4-17

3)ナオミの祝福(18-23

4ルツのプロポーズ(3:1-18

1)ナオミの知恵(1-5

2)打ち場での一夜(63

3)ナオミヘの報告(14-18

5,ルツの結婚と出産(4:17a

(1)ボアズの買い戻し(1-12

2)結婚と出産(13

3)ナオミヘの報い(14-17a

6.ルツ,ダビデの先祖となる(4:1722

1)オベデの命名(17b

2)オベデはエッサイの父(17c

(3)エッサイの于ダビデの系図(18-22

ルツ記は、旧約聖書の一部であり、ヘブライ聖書の「歴史書」の一つです。この物語は、イスラエルの裁判官時代(約1200年頃-1020年頃前後)に、ユダのベツレヘムとモアブの国を舞台にして展開されます。ルツ記は、主に忠誠、恩義、愛情、家族といったテーマに焦点を当てています。

物語は、飢饉のためイスラエルからモアブへ移住したエリメレクとナオミという夫婦の家族を中心に展開されます。エリメレクは死亡し、ナオミは2人の息子とそのモアブ人の妻、ルツとオルパと共に暮らしていました。しかし、息子たちも亡くなり、ナオミはモアブで一人取り残されます。彼女はイスラエルへの帰還を決意し、オルパはモアブに残りますが、ルツはナオミと共にベツレヘムへ行くことを選びます。

ベツレヘムで、ルツはエリメレクの親戚であるボアズの畑で働くようになります。ボアズはルツとナオミに対して親切にふるまい、ルツは彼に感謝の意を示します。最終的に、ボアズはルツと結婚し、2人は息子オベデをもうけます。オベデは後にイエス(イエスとはダビデ王の父)の祖父となり、それによってルツはダビデ王やイエス・キリストの家系に結びついていることになります。

ルツ記の物語は、家族の絆、忠誠心、神への信仰、慈しみの精神を通して、神がどのようにすべての民族を救済計画に組み込んでいるかを示しています。また、この物語は、非ユダヤ人であるルツがイスラエルの民として受け入れられることで、神の愛と恵みがすべての人々に及ぶことを示唆しています。

ルツ記は、短い物語であるにもかかわらず、多くの重要な教訓や洞察が詰まっています。以下に、そのいくつかを紹介します。

  1. 神の摂理:ルツ記は、神が人々の日常生活において摂理を働かせていることを示しています。飢饉や家族の悲劇から始まった物語は、最終的にルツとナオミが祝福を受けることで終わります。神は彼女たちの困難を通じて、大きな目的を果たしています。
  2. 忠誠と友情:ルツとナオミの関係は、忠誠と友情の美しい例です。ルツは、自分の国や家族を離れてナオミに付き添い、彼女を支えます。この自己犠牲的な愛が、最終的に両者に祝福をもたらすことになります。
  3. 恵みと包容:ボアズはルツに対して、寛大で包容的です。彼はルツがモアブ人であることを理由に彼女を拒絶することなく、むしろ彼女を受け入れ、支援し、最終的に結婚します。ボアズの態度は、神の恵みと包容の象徴であり、すべての人々に開かれた救いの道を示しています。
  4. 神の主権:ルツ記は、神が歴史を通じて主権を行使していることを示しています。ルツがイスラエルの民として受け入れられ、ダビデ王の家系に結びつくことで、神の救いの計画が進展していることがわかります。ルツはイエス・キリストの家系に組み込まれ、神の救済の物語の一部となります。
  5. 貧困と社会的責任:ルツ記は、貧困者や未亡人の保護を促すユダヤ教の教えを示しています。ボアズは、ルツが彼の畑で働くことを許可し、彼女とナオミを支援します。これは、神が社会的弱者を慈しむ心を持っており、私たちにも同様に行動するように求めていることを示しています。

  1. 女性の力と勇気:ルツ記は、ルツとナオミという2人の強く勇気ある女性を中心に展開されます。彼女たちは困難な状況に直面しながらも、信仰を持ち続け、自分たちの運命を変えるために行動します。彼女たちの物語は、女性の力と影響力を称えるものであり、聖書において女性が果たす重要な役割を示しています。
  2. 家族と継承:ルツ記は、家族の絆と継承の重要性を強調しています。ルツは、ボアズと結婚し、オベデという息子をもうけます。これにより、エリメレク家の家系が続くことになります。家族の繋がりと継承は、神の計画において重要な役割を果たしており、ルツ記はそのことを明示しています。
  3. 神と人間の協力:ルツ記では、神の摂理と人間の努力が共に働いて、物語が展開されていきます。ルツとナオミは自分たちの状況を改善するために行動し、ボアズは彼女たちを支援します。同時に、神は彼らの努力に恵みを注ぎ、結果的に彼らに祝福を与えます。神と人間の協力の重要性は、私たちが神の恵みを受け入れ、神の計画に従って行動することによって、神の祝福を受けることができることを示しています。
  4. 移民と多文化主義:ルツはモアブ人の出身であり、イスラエルに移住して新しい文化と宗教を受け入れます。彼女の物語は、異文化間の理解と尊重の重要性を示しており、異なる文化や民族の人々が互いに学び、成長し、共生することができることを教えています。
  5. 信仰の成長:ルツ記は、信仰が成長し、試練を通じて強化されることを示しています。ルツとナオミは困難な状況にありながらも、神の導きによって祝福を得るようになるのです。
  1. 恩恵の連鎖:ルツ記は、一度の善行が他の人々にも恩恵をもたらすことを示しています。ルツがナオミに対する忠誠を示したことで、ボアズがルツに恩恵を与え、最終的にはルツとナオミの両方に祝福がもたらされます。この連鎖は、善意や慈悲が人々の間で広がっていく様子を示し、私たちにも善行を行うことの重要性を教えてくれます。
  2. 宗教的統合:ルツ記は、異なる信仰背景を持つ人々が共に信仰を深め、新しい信仰コミュニティに統合されることを示しています。ルツはモアブ人の出身でありながら、イスラエルの信仰を受け入れ、ユダヤ教の信仰共同体に参加します。これは、宗教的な違いを超えて互いに支え合い、共に信仰を深めることの重要性を教えてくれます。
  3. 個人の価値:ルツ記は、一見取るに足らないような人物でも、神の目には大切であることを示しています。ルツは、外国人の女性であり、当時の社会では弱い立場にあったにもかかわらず、神は彼女を大切にし、祝福しました。このことは、神がすべての人を平等に愛し、価値を見出していることを教えてくれます。
  4. 神の計画への信頼:ルツ記は、神の計画に対する信頼が報われることを示しています。ルツとナオミは、困難な状況にもかかわらず、神の計画を信じ、その指導に従いました。結果として、彼女たちは神の祝福を受けました。私たちにとっても、神の計画を信じ、信頼することが、最終的には良い結果をもたらすことを教えてくれます。