著者と年代

エズラ記とネヘミヤ記は、古いヘブル語写本やギリシア語訳などで一書として扱われており、歴代誌との密接な関係が指摘されています。19世紀中期以降、これら三書が同じ著者(歴代誌記者)によって書かれたという見解が広まりました。一部の保守派学者は、エズラ自身が歴代誌記者であったとする説も提唱しています。

しかし、歴代誌を前400年頃の著作とする説が有力で、エズラが著者だとすると彼が高齢であることが現実的でないとされます。また、歴代誌とエズラ・ネヘミヤ記には明確な相違点があり、記事の重複などから別人の手によるものと見るべきです。従って、これら三書には歴史的連続性があるものの、エズラ記はエズラに、ネヘミヤ記はネヘミヤに、歴代誌は歴代誌記者によるものと見てよいとされています。

歴史的背景

イスラエル民族は南北に分かれ、宗教改革が行われたものの堕落の道を進みました。北イスラエル王国はアッシリヤ帝国に、南ユダ王国はバビロニア帝国に滅ぼされました。捕囚の地でイスラエル民族は異教の影響を受けつつも、信仰を深めました。エレミヤの預言により、バビロン滅亡後、捕囚は終わります。クロス王は捕囚民族を帰国させ、宗教を尊重する政策を採りました。エズラ記、ネヘミヤ記などはペルシャ帝国時代のイスラエル民族に関連する記録です。ただし、エズラとネヘミヤの帰還時期には異説があり、その理由はエズラとネヘミヤが聖書で一緒に登場するのが限られているためです。

ネヘミヤが先に帰還したとする立場では、混宗婚の問題について、エズラ記の厳格な解決策が講じられた後にネヘミヤ記で緩やかな解決が示されており、これが理解しやすいとされます。ただし、これは主観的説明で、エズラとネヘミヤがそれぞれ最善の方法を選んだだけである可能性があります。また、ネヘミヤ時代の大祭司エルヤシブとエズラ時代の大祭司ヨハナンは別人であると見るべきです。ヨハナンとヤドアの同一人物説には必然性がなく、伝統的なエズラ→ネヘミヤの順序を支持する立場が強まっています。

アウトラインは以下のようになります。

1.最初の帰還と神殿再建(1-6章)

1)捕囚からの帰還(1-2章)

.クロス王の勅令(1:1-4

b.帰国の準備(1:5-11

.帰国者名簿(2:1-70

①指導者(1-2 a

②氏族別(2b-20

③町村別(21-35

④祭司(36-39

⑤レビ人(40-42

⑥神殿奉仕者(43-58

⑦家系不明者(59-63

⑧合計(6・卜67

⑨ささげ物(68-e)

⑩定住(70

2)神殿再建(3-6章)   

.祭壇の再建(3:1-6)

b.神殿の再建開始(3=7-13)    一

cy呼建妨害(4=1-24

①クロス王時代の妨害(1-5

②アハシュエロス王時代の妨害(6

③アルタシヤスタ王時代の妨害(7-23

④神殿再建工事の中断(24

d.神殿再建工事の完成(5:1-6:22

①神の激励によるエ事再開(5:1-2

②総督の調査(5:3-5

③王への報告と質問(5;6-17

④勅令の発見(6:1-5

⑤再建の許可(6:6-12

⑥再建工事の完了(6;13-15

⑦神殿奉献式(G=16-18

⑧過越の祭(6:19-22

2.エズラの帰国と改革(?-1(璋)

(1)帰国の旅(7-8章)

.エズラの使命(7:1-10

b.王の命令(7:11-26

.エズラの感謝(7:27-28

d.同行者名簿(8:1-14

.レビ人の募集(8:15-20

f,旅行のための祈り(821-23

.貴重品の管理(8:24-30

h.エルサレム到着(8:31-36

2)改革(9-10章)

.混宗婚(9=1-5

b.エズラの祈り(9;6-15

.離婚の誓約(1011-6

d.悔い改め(10:7-17

.混宗婚者の名簿(10=18,44

エズラ記は、旧約聖書に含まれる歴史書の一部であり、ユダヤ教のタナハ(ヘブライ語聖書)にも含まれています。エズラ記は、ネヘミヤ記と密接に関連しており、しばしばエズラ・ネヘミヤとして一緒に扱われることがあります。エズラ記は、バビロニアからのユダヤ人の帰還とエルサレム神殿の再建を描いています。

エズラ記は、以下のような主要な出来事を説明しています。

  1. キュロスの勅令:ペルシャ王キュロス2世が、ユダヤ人にエルサレムへの帰還と神殿の再建を許可する勅令を出します。これにより、バビロニア捕囚からのユダヤ人の帰還が始まります。
  2. 神殿の礎石の置かれる:ユダヤ人たちはエルサレムに戻り、神殿の再建に取りかかります。祭壇を再建し、礎石を置くことで、礼拝の場を再び確立します。
  3. 神殿の再建の遅れ:周辺諸国からの妨害や政治的な圧力により、神殿の再建は一時的に停滞します。
  4. ダリウスの勅令:ペルシャ王ダリウス1世が、神殿の再建を支援する勅令を出し、ユダヤ人たちが再建作業を再開します。
  5. 神殿の完成:エズラ記によると、約20年後、神殿はついに完成し、ユダヤ人たちはその奉献式を喜んで祝います。
  6. エズラの到着:エズラは、ペルシャ王アルタクセルクセス1世の許可を得て、エルサレムに向かいます。彼は神の律法(モーセの律法)を持ってきて、ユダヤ人に教え、ユダヤ教の律法と慣習を復活させることを目指します。

  1. 神の計画と介入:エズラ記は、神がペルシャ王たちを通じてユダヤ人の帰還と神殿の再建を支援し、神が歴史の中で働いていることを示しています。このテーマは、信仰者にとって神が自分たちの人生や歴史の中で介入し、導いていることを信頼することが重要であることを教えています。
  2. 社会的秩序の回復:バビロニア捕囚からの帰還後、エズラはユダヤ人社会の秩序を回復するために努力します。彼は、神の律法を中心に据え、ユダヤ人に律法に従う生活を送るよう求めます。このテーマは、個人や社会の安定と秩序が信仰と道徳に基づいて築かれることを示しています。
  3. 神との関係の回復:エズラ記では、神殿の再建と律法の復活によって、ユダヤ人が神との関係を回復しようと努力している様子が描かれています。これは、信仰者にとって、神との関係を維持し、回復することが重要であることを教えています。
  4. 悔い改めと赦し:エズラ記の後半では、ユダヤ人が神の律法に従わない行為を悔い改め、神から赦しを求める様子が描かれています。このテーマは、信仰者にとって、過ちや罪を悔い改め、神から赦しを受けることが重要であることを示しています。
  5. 民族と宗教の純粋性:エズラ記では、異民族との結婚が問題視され、ユダヤ人が自分たちの民族と宗教の純粋性を保つよう求められます。このテーマは、宗教的アイデンティティや信仰の純粋性を維持することが重要であることを示唆しています。

エズラ記は、歴史的文脈や宗教的テーマに加えて、個人や社会に対する普遍的な教えをも提供しています。

  1. リーダーシップと責任:エズラとネヘミヤは、ユダヤ人の帰還とエルサレムの再建を指導し、彼らの責任を果たします。彼らは信仰と誠実さを持って、困難な状況に立ち向かいました。このテーマは、リーダーシップの重要性と、リーダーが誠実さ、信仰、勇気を持って自分の役割を果たすべきであることを示しています。
  2. 奉仕と献身:エズラ記では、神殿の再建や律法の復興に尽力するユダヤ人たちが、奉仕と献身の精神で取り組んでいます。彼らは神に対する献身と共同体の利益のために働きました。このテーマは、信仰者にとって、神への奉仕や献身が重要であることを示しています。
  3. 忍耐と持続力:エズラ記は、神殿の再建や律法の復興の過程で、ユダヤ人たちが多くの困難や障害に直面しても、持続力と忍耐を持って目標に向かって進んでいったことを示しています。このテーマは、信仰者にとって、困難な状況に直面しても忍耐と持続力を持って信仰を実践することが重要であることを示しています。
  4. 神の忠実さ:エズラ記を通して、神がユダヤ人に約束を守り、彼らを支え、導いていることが明らかになります。神の忠実さは、信仰者にとって大きな慰めと励ましであり、神が自分たちの人生や歴史の中で働いていることを信頼することが大切であることを示しています。

エズラ記から得られる知恵や洞察は、現代の信者にとっても、信仰、道徳、倫理、リーダーシップなど、さまざまな面で適用されることができます。この聖書の物語は、困難や試練に直面したときでも、神が信者たちを導き、支えてくれるものです。