歴代誌が扱う歴史の範囲は,人類の創造から始まり,ペルシヤ王クロスによる解放勅令にまで至っています.これは聖書の歴史書で言えば,創世記の初めからエズラ記の初めまでの部分と並行する内容です.

書かれた年代は、最終記事(クロス王による解放勅令)から見て,前538年より後であることは確かです.エズラが著者であるとすれば,エズラ記め著作年代に近く,前440年前後かと考えられます,

歴代誌は、人類の創造からペルシャ王クロスの解放勅令までの歴史を扱い、聖書の創世記からエズラ記の初めまでの範囲に対応しています。歴代誌には独自の特徴があり、系図やリストが含まれています。これらの系図はイスラエル民族の歴史を示し、正系と傍系が区別され、さらに正系の中にも主流と傍流が存在します。アダムから始まり、ノア、セム、アブラハムと続く線が正系であり、イシュマエルやエサウから分岐する線が傍系とされています。また、ユダとレビの子孫が主流であるとされています。

歴代誌では、ダビデが重要な人物として描かれています。彼は神の王国における真の礼拝者であり、特に神殿礼拝の創始者であるためです。ダビデは神殿建設の準備を終え、礼拝に必要な制度や組織を整えました。バテ・シェバ事件が省かれた理由はダビデの美化・理想化ではなく、読者がサムエル記を読んでいることが前提だからです。しかし、人口調査事件は神殿建設用地選定の要因として記されています。

歴代誌の執筆目的は、学ぶべき教訓を提供する神学的歴史書であり、単なる歴史書の改訂増補版ではないと考えられます。歴代誌は、厳密な意味での歴史書ではなく、注釈的歴史書と性格付けされるべきで、その価値は低くないとされています。歴代誌の目的は、当時のイスラエルに純正な礼拝を促し、再建を図ることであると推測されます。

歴代誌の信憑性は、過去に評価が低く扱われることが多かったのですが、厳密な歴史書ではなく説教や注釈書という性格を考慮すべきです。また、他の歴史書との記事の相違や数値の問題についても慎重に検討することで、評価が改められるべきでしょう。結論的に、歴代誌は歴史書として低い評価を受けるべきではありません。

 

アウトラインは以下のようになります。

第1部系図とリスト(I歴1-9章)

1,系図(1 1:1-8:40

1)アダムからイスラエルヘ.及び傍系として,

イシュマエルとエサウの子孫(Ⅰ 1:1-54

.アダムからアブラハムまで(1-28

b.イシュマエルの于孫,ほか(29-33

c,エサウの子孫(34-54

2)ユダの子孫(1 2:1-4:23

.ユダの子孫(主力)(1 2:1-55

b,特にダビデの子孫.捕囚後にまで至る系図(1 3::L-24

.その他のユダ部族(1 4:1-23

3)シメオンの子孫(1 4:24-43

4)ルベンの子孫(1 5:1-10

5)ガドの子孫(1 5:1117

(6)2部族半についての挿話(1 5:18-22

7)マナセの子孫(半部族)(1 5:23-26

8)レビの子孫(Ⅰ 6:1-81

9)イッサカルの子孫(1 7:1-5

10)べニヤミンの子孫(その1)(1 7:6-12

11)ナフタリの子孫(1 7:13

12)マナセの子孫(残りの半部族)(Ⅰ 7:14-19

13)エフライムの子孫(Ⅰ 7:20-29

14)アシェルの子孫(1 7:30-40

15)べニヤミンの子孫(その2)(1 8:1-40

 

2.捕囚帰還後のエルサレム住民リスト

0 9:1-34

3.(ダビデ伝の序曲として)サウルの系図

1 9:3544

 

第2部王国の歴史(I歴10- II 36章)

1.ダビデ伝(1 10:1-29:30

1)(前史として)サウルの死(1 10:1-14

2)全イスラエルの王ダビデ(1 11:1-9

3)ダビデを助けた勇士たち(1 11:10-12:40

4)神の箱の移動(その1)(1 13:1-14

5)王権の確立(1 14:1-17

.王家の確立(1-7

b.対ペリシテ戦の圧勝(8-17

6)神の箱の移動(その2)(1 15:1-29

7)箱安置の感謝と賛美(1 16:1-43

8)ダビデ契約(1 17:1-27

.神殿建設の願いと主の御旨(1-15

b.ダビデの応答の祈り(16-27

9)対外征服戦の勝利(1 18:1-20:8

.近隣諸国への勝利(1 18:1-13

b.ダビデのスタッフ(1 18:14-17

c,アモン王ハヌンとの葛藤(1 19:1-5

d.アモン・アラム連合軍との戦いと勝利(1 19:6-19

.アモン人の町ラバ征服(1 20:1-3

f.対ペリシテ完勝(1 20:4-8

10)人口調査事件(1 21:1-30

.人口調査の罪(1-6

b,さばきとしての疫病(7-15

.ダビデの悔い改めと祈り[].6-17

d,オルナンの打ち場に建設された祭壇(18-30

11)神殿建設の準備(1 22:1-19

12)神殿奉仕者の編成(1 23:1-26:32

. レビ人の組分け(1 23:1-32

b.アロンの子らの組分け(1 24:1-31

.聖歌隊の編成(1 25:1-31

d.神殿の門衛などの組分け(1 26:1-32

13)軍団・官僚などの組織(1 27:1-34

14)次代への励ましと賛美(1 28:1-29:30

 

2.ソロモン伝(Ⅱ1:1-9:31

1)即位礼拝と主の祝福(Ⅱ 1: 1-17

2)神殿建設(Ⅱ 2:1-4:22

.フラムヘの協力依頼(Ⅱ 2:1-18

b.建築の詳細(13:1-4:22

3)神殿の奉献式(Ⅱ 5:1-7:22

.主の契約の箱搬入(Ⅱ 5:1-14

b.ソロモンの式辞と祈り(Ⅱ 6:1-42

.礼拝と犠牲奉献(Ⅱ 7:1-10)I歴代 1章

d.主の約束と警告(Ⅱ 7:11-22

4)統治の諸要件(Ⅱ 8:1-18

5)ソロモンの知恵と富(Ⅱ 9:1-31

.シェバの女王の来訪と南方貿易(1-12

b.その他の貿易と富(13-28

.その生涯の総括(29-31

3.歴代諸王列伝(Ⅱ 10:1-36:23

1)レハブアム(Ⅱ 10:112:16

.即位と王国分裂(Ⅱ 10:L1:4

b.王国の強化( 11:5-23

c.王の背教と懲らしめ,悔い改めと赦し (Ⅱ 2:1-12

d.その生涯の総括(Ⅱ 12:13-16

2)アビヤ(Ⅱ 3:1-22

3)アサ(Ⅱ 14:1-16:14

.宗教改革と国防強化(Ⅱ 14:1-8

bクシュ軍の侵攻に対する勝利(Ⅱ 14:9-15

.預言者による励まし(Ⅱ 15:1-19

d.晩年のアサの低落(Ⅱ16:1-14

4)ヨシャパテ( 17:1-20:37

.善王ヨシャパテの繁栄(Ⅱ 17:1-19

b.アハブとの同盟の結果(Ⅱ 8:1-34

c.エフーの警告と王の従順(Ⅱ 19:1-H)

d.連合軍の侵攻に対する大勝利,生涯の総括(Ⅱ 20:1-37

5)ヨラム(Ⅱ 21:1-20

6)アハズヤ(Ⅱ 22:1-9

7)背教の女王アタルヤ(Ⅱ 22:10-23:21

8)ヨアシュ(Ⅱ 24:1-27

9)アマツヤ(Ⅱ 25:1-28

10)ウジヤ(アザルヤ)(Ⅱ 26:1-23

11)ヨタム(Ⅱ 27:9

12)アハズ(Ⅱ 28:1-27

13)善王ヒゼキヤ(Ⅱ 29:1-32:33

.宗教改革(Ⅱ29:1-36

b,過越の祭の励行(Ⅱ 30:1-27

.律法順守とその祝福(Ⅱ 31:1-21

d.アッシリヤ軍の侵攻(Ⅱ 32:1-23

.病,繁栄,総括(Ⅱ 32:24-33

14)マナセ(Ⅱ 33:1-20

15)アモン(Ⅱ 33:21-25

16)善王ヨシヤ(Ⅱ 34:1-35:27

.宗教改革(Ⅱ 34:1-33

b.過越の祭の励行(Ⅱ 35:1-19

.ヨシヤの戦死,総括(Ⅱ 35:20-27

17)衰亡期の王たち(Ⅱ 36:1-21

.エホアハズ(1-4

b.エホヤキム(5-8

c,エホヤ斗ン(9-10

d.ゼデキヤ.王国滅亡(11-21

18)クロスの勅令,帰還(Ⅱ 36:22-23

歴代誌上(上代)は、旧約聖書の一部であり、歴史書の一つです。歴代誌上と歴代誌下は、もともと一つの書物として書かれていましたが、後に二つに分けられました。歴代誌は、ユダヤ教のタナハの一部であり、キリスト教の旧約聖書にも含まれています。歴代誌は、創世記から列王記までの聖書の物語を総括し、特にダビデ王朝に焦点を当てています。

歴代誌上の主な内容は以下の通りです。

  1. アダムからダビデまでの系譜:歴代誌上は、創世記から始まり、アダムからダビデ王までの系譜を辿ります。この系譜は、神の選んだ民イスラエルの歴史と、特にダビデ王朝の重要性を強調しています。
  2. イスラエルの歴史の概要:歴代誌上は、イスラエルの歴史を簡潔に概説しています。アブラハム、ヤコブ、ヨセフ、モーセなどの重要な人物や、エジプトからの脱出、約束の地の征服などの出来事が含まれています。
  3. サウル王の治世:歴代誌上は、イスラエルの最初の王であるサウル王の治世を説明します。サウルは神に背いて失敗し、王位を失います。
  4. ダビデ王の即位と治世:歴代誌上は、サウル王の後継者としてダビデ王が即位し、イスラエルを統治する様子を描いています。ダビデは神に従順であり、神から祝福を受けます。
  5. 神の契約とダビデの約束:ダビデ王は、神との契約を結び、彼の子孫が永遠にイスラエルの王であり続けるという約束を受けます。これは、後にイエス・キリストがダビデ王の子孫として来ることを予告しています。
  6. 神殿の準備:ダビデ王は、エルサレムに神殿を建設する計画を立てますが、神は彼にその建設を禁じ、その任務を彼の息子であるソロモンが神殿建設を実行することになります。

歴代誌上にはさらに多くの教えや洞察が含まれています。以下にいくつかを挙げます。

  1. 神の導き:歴代誌上では、神がイスラエルの民を導いており、彼らが神に従順である限り、神が彼らを保護し、祝福することが示されています。これは信仰者にとって、神に信頼し従うことが重要であることを教えています。
  2. 神の選び:歴代誌上は、神が特定の人々や家族(特にダビデの家族)を選び、特別な役割を与えることを示しています。これは、神の目的や計画が人間の理解を超えていることを示しており、信仰者は神が彼らを選び、導いてくれることを信じることが大切です。
  3. 神との関係の重要性:歴代誌上の主人公たちは、神との関係を大切にし、神の導きを求めることが重要だと示しています。これは、信仰者にとって、神との関係を深め、神の意志に従うことが成功への鍵であることを示しています。
  4. 礼拝と賛美:歴代誌上では、ダビデ王がエルサレムにアーク(契約の箱)を運び入れる際、大きな祝祭を開催し、神を賛美します。これは、信仰者にとって、礼拝と賛美が神に喜ばれる行為であり、神の恵みや祝福を受けるために重要であることを示しています。
  5. 従順と悔い改め:歴代誌上では、サウルやダビデなどの人物が、神に背いたときには神の懲罰を受け、悔い改めたときには神の赦しを受けることが示されています。これは、信仰者にとって、従順と悔い改めが神の赦しと回復を受けるために重要であることを教えています。
  1. リーダーシップとその資質:歴代誌上では、ダビデやサウルなどのリーダーたちが描かれており、良いリーダーシップの資質が強調されています。特にダビデは、神に従順であること、正義を追求すること、民に対する愛情を持つことなど、信仰者にとって模範的なリーダーとされています。
  2. 神の恵みと赦し:歴代誌上では、神が人々の罪を赦し、恵みを与えることが何度も示されています。例えば、ダビデがバテシバとの罪を犯した後、彼は神に悔い改め、神の赦しを受けます。これは信仰者にとって、神の恵みが無限であり、心から悔い改めることで赦されることを教えています。
  3. 神の主権:歴代誌上では、神が全ての出来事や歴史の中で主権を持っていることが示されています。神は、王たちや民の選択によっても彼らを導き、神の目的を達成します。これは、信仰者にとって、どんな状況でも神が支配しており、神を信頼することが重要であることを示しています。
  4. 全ての人々に対する神の計画:歴代誌上では、神がイスラエルの民だけでなく、異邦人にも恵みと祝福を与えることが示されています。これは、神の計画が全ての人々に及ぶことを示しており、信仰者は異なる背景や信仰を持つ人々に対しても愛と受容の心を持つことが大切です。

これらの教えや洞察は、現代の信者にとっても適用可能であり、信仰、リーダーシップ、神の恵み、主権など、さまざまな面での成長や深化に役立ちます。歴代誌上は、神の導きや恵み、選びの意味を教えられて、罪ある人間であっても神により頼む者には神が救いの御手を差し伸べてくださることが示されています。