「箴言」とは、ヘブル語のミシュレー(マーシヤール)に由来し、ことわざや格言という意味で使われます。知恵文学の一種で、古代文化のバビロニアやエジプトでも存在しました。これらは、王や祭司、学者たちの経験に基づく格言やことわざで、教育目的で生み出されたものです。旧約聖書の箴言は、知恵と訓戒を学ぶことを主題にしており、知恵に関する特徴が強い書です。
「箴言」は、ソロモンの名が冠されていますが、全て彼によるものではなく、複数の著者によって書かれたり集められた部分が1つにまとめられています。ソロモンは知恵の象徴で、彼自身も多くの箴言を語ったとされていますが、彼が選択し表現したものもあるでしょう。また、「知恵のある者」やアグル、レムエルなど、他の著者や民族の影響も見られます。「箴言」は、ソロモン時代以前のものも含まれており、王の周辺で成立したり集められたと考えられます。25-29章は、ユダの王ヒゼキヤがソロモンの箴言を集めて書き写させたもので、ヒゼキヤの時代に成立したとされています。
箴言の著作年代については、以前は捕囚後だと考えられていましたが、研究が進むにつれ、ソロモン時代かそれ以前のものであることが明らかになりました。箴言は様々な部分から成り立っており、大部分はソロモンの時代に成立したと思われますが、現在の形が成立したのは、ヒゼキヤの時代(前700年頃)と考えられます。

箴言は韻律を持った詩の形で書かれています.箴言は格言や警句を集めて適宜に配列したものであるから,論理的一貫性を求めるのは困難です.

従って各章ごとの主題を決定するのは無理です.箴言の中には2行から成る対句が多く見出される.この形式は大別すると2種に分けられます.1つは,第1行の意味と第2行の意味が対立することにより,互いにその意味を強調するもので,その一例として10:1を挙げることが出来ます.

  「知恵のある子は父を喜ばせ,

  愚かな子は母の悲しみである」.

 この場合,「知恵のある子」と「愚かな子」が対立し,「父」と「母」が対立し,「喜ばせ」と「悲しみである」が対立する.このような対句は非常に多く見出されます.

 もう1つは,1行目の意味を2行目が補足して十分な意味とするものである.その一例として16:16を挙げることが出来ます.

  「知恵を得ることは,黄金を得るよりはるかにまさる.

  悟りを得ることは銀を得るよりも望ましい」.

 この場合は「知恵を得ること」と「悟りを得ること」,「黄金を得る」と「銀を得る」,「はるかにまさる」と「望ましい」が,対立ではなく,並行表現で言い表したものも多くあると考えられます.

箴言はユダヤ人の精神生活や宗教生活に大きな影響を及ぼしました.このことは,頌言の言葉が新約聖書の中で引用されていたり,言及されていることによっても明らかです.例えばマタ12:33と蔵11:30,ロマ12:20と筑25:21-22,ヘブ12:5-6と箴言3:11-121ペテ2:17と箴言24:21,2ペテ2:22と箴言26:11等が挙げられます.

アウトラインは以下のようになります。

1。序言(1:7

2.知恵についての教え(1:8-9:18

 (1)父の訓戒その11:8-33

  a.罪人に従ってはならない(8-19

  b.知恵の呼びかけ(20-33

 (2)知恵の恵み(2:1-22

  a.知恵を求める者(1-6

  b.知恵による守り(7-12

 c.悪者の道(13-15

  d.悪い女(16-19

  e. まとめの勧告(20-22

 (3)知恵の結果(3:1-35

  a.知恵への信頼(1-12

  b.知恵を得る者の幸福(13-20

  c.知恵を得る者に対する主の守り(21-26

  d.知恵ある者と隣人(27-35

 (4)父の訓戒その24:1-27

  a.知恵の大切さ(1-9

  b.2つの道(10-19

  c.父の教えを目から離すな(20-27

 (5)不倫についての戒め(5:1-23

  a.不倫についての戒め(1-6

670

  b.不倫の結果(7-14

  c.貞潔の勧め(15-19

  d.不倫に対する警告(20-23

 (6)種々の警告(6:1-35

  a.憚証人に対する警告(1-5

  b.怠け者に対する警告(6-11

  c. よこしまな者に対する警告(12L5

  d.主の憎むもの(16-19

  e.不倫に対する警告(20-35

 (7)性的誘惑に対する警告(7:1-27

  a.序論(1-5

  b.本論(6-23

  c.結論(24-27

 ㈲知恵について(8:1-36

  a.知恵の呼びかけ(1-11

  b.知恵の自己証言(12-21

  c.知恵と創造(22-31

  d.知恵の勧告(32-36

 (9)知恵と愚かさの招き(9:1-18

  a.知恵の招き(1-6

  b.あざける者と知恵のある者(7-12

  c.愚かな女の招き(13-18

3.ソロモンの篁言(10:1-22:16

4.知恵のある者の言葉(22:17-24:34

 (1)序言(22:17-21

 (230句(22:22-24:22

 (3)知恵ある者の言葉の続編(24:23-34

5.ヒゼキヤによるソロモンの蔵言(25:1-29:27

6.アグルの言葉(30:1-33

7,レムエルの言葉(31:1-9

8.しっかりした妻(31:10-31

箴言(しんげん)とは、古代イスラエルの知恵文学の一部であり、ヘブライ聖書(キリスト教の旧約聖書)の一部をなす書物です。主にソロモン王(紀元前10世紀頃)の著作とされていますが、他の古代イスラエルの賢人たちの知恵も含まれています。

箴言は、人生における道徳、倫理、知恵、行動の指針や普遍的な教訓を提供する短い格言や教えを集めたものです。箴言は、人々が善良で道徳的な生活を送ることを奨励し、知恵や理解、謙虚さ、正義、忠誠、節制、勤勉などの徳を強調しています。

箴言の目的は、読者に人生の成功や神に喜ばれる生活のための知恵を与えることです。箴言はまた、神を敬うことが知恵の始まりであると述べており、神を信じ、その教えに従うことが、人生で最も重要なことであると示唆しています。

箴言は様々なテーマを取り扱っており、友情、家族、子育て、誠実、正直、怒り、言葉の力、富と貧困、懲罰と報酬などのトピックが含まれています。箴言は人間の普遍的な経験や悩みに対して、古代の知恵を用いて答えを提供しようとしています。

箴言は、人生のあらゆる面にわたる教訓や助言を提供しており、以下のようなさまざまなトピックが含まれています。

  1. 知恵の尊さ:知恵は財産や地位よりも価値があり、人生の成功の鍵であると強調されています。知恵は神からの贈り物であり、人々は知恵を求め、それを実践することで神に従うことができるとされています。
  2. 神を敬う心:箴言は、神を敬うことが知恵の始まりであり、恐れと尊敬の念を持って神に接することが善い人生を歩むための基盤であると述べています。
  3. 言葉の力:言葉は人間関係や人生に大きな影響を与えるとされており、箴言では正直で優しい言葉の重要性が強調されています。また、嘘や悪口、中傷などの負の言葉は避けるべきであるとも述べられています。
  4. 財産と富:箴言は、富を追求すること自体は悪いことではないが、それが全てではなく、正義や道徳に基づいた生活を送ることがより重要であると教えています。また、貧しい人々を助けることが善い行いであるとも述べられています。
  5. 友情:箴言では、良い友達の重要性が強調されており、忠実で誠実な友達は貴重な宝物であるとされています。また、悪い友達は避けるべきであるとも教えられています。
  6. 怒りと寛容:怒りは自制心を失わせ、衝突を引き起こすため、箴言は自制心を持ち、寛容な心で他人と接することを奨励しています。
  7. 家族と子育て:家族は社会の基盤であり、箴言では子供たちに適切な教育と愛情を与えることが強調されています。また、夫婦間の愛情や尊敬も大切であるとされています。
  1. 勤勉と怠惰:箴言では、勤勉さが成功への道であると強調されています。怠惰な人は貧困や不幸に直面することが多いとされ、勤勉で努力家であることが善良な生活を送るための重要な要素であるとされています。
  2. 節制:箴言は自己コントロールや節制を重視しています。欲望に支配されることなく、適切な節度を持って行動することが、健康で幸せな人生を送るために重要であるとされています。
  3. 正義と公平:箴言では、正義と公平を重んじることが強調されています。他人に対して正直で公正であること、弱者を擁護し、権力を悪用しないことが、善良な人間としての基本的な姿勢であると教えられています。
  4. 謙虚さ:謙虚さは箴言の中で大切な徳とされています。自分自身を高く評価しすぎず、他人の意見や助言に耳を傾けることが、知恵を増やし、人間関係を改善する助けとなるとされています。
  5. 悔い改め:箴言では、自分の過ちや罪を認め、悔い改めることが重要だとされています。神に対して誠実に悔い改めることで、赦しや新たな始まりを得ることができると教えられています。

総じて、箴言は、人々が神を敬い、道徳的で知恵に満ちた生活を送るための普遍的な教えや指針を提供しています。これらの教えは現代においても、人生の様々な局面で適用できる智慧や助言となっています。