このことばは旧約聖書では「伝道者の書」にのみ出ており,「集める」という動詞に由来するヘブル語コーヘレスの訳です.

集会場で語る者という意味で「伝道者」(伝1:1等)となっています.70人訳もギリシャ語エクレーシアステース(「集会(エクレーシア)で語る者」という意味)を用いています.新約聖書では,「良いことの知らせを伝える人々」(ロマ10:15)という意味のギリシャ語ユーアングリステースが用いられ,初代教会の中で立てられた使徒,預言者,伝道者,牧師,教師といった務めの一つとしてあげられています(エペ4:11.執事として選ばれた7人の中のピリポ(使6:521:8)や,パウロの弟子テモテ(Ⅱテモ4:5)が「伝道者」と呼ばれて奉仕をしています(参照ロマ15:20.

書名は「コーヘレス」と呼ばれ、ヘブル語聖書では第3区分の諸書の中に位置しています。コーヘレスとは、「集める」を意味し、会衆を招集して祝福や祈りを行う役割を持つとされています。ユダヤ教では仮庵の祭の第3日に読まれ、日本語訳や他の翻訳聖書では、箴言の次、雅歌の前に置かれています。正典から除外されることはありませんでしたが、ミシュナでは雅歌と共に正典書に含めるか疑問視されていました。

本書はユダヤ教の伝承やキリスト教会ではソロモンの作品とされてきました。しかし、一部の学者はソロモン以後の捕囚帰還時代後(前400-200年)に成立したと考えています。主な根拠は内容、言語、思想で、ソロモンの名が明記されていないことや、王制批判などが含まれていることが挙げられます。しかし、内容からソロモンを示唆する部分もあり、彼が著者であると考えるのは自然です。

言語面では、アラム語法が多く見られることから捕囚帰還後の著作に似ているとされるが、G・アーチャーは本書がヘブル語歴史のどの時代にも対応しないと結論付けています。そのため、言語に基づいて年代決定するのは確実ではないとされています。

ソロモンが著者でなければならないとは断定できないものの、ソロモンが著者であってはならない強固な理由もないと言えます。

本書にストア派的懐疑厭世観やエピクロス派的快楽主義が含まれており、正典に入っていることを認めながらも、困難な解釈が試みられてきたことが述べられています。ユダヤ教では、ソロモンが一時的に退位し、神から離反していた時代の作品と考えられている。寓意的解釈が用いられ、キリスト教の注解者にも採用されています。また、疑問文に変更する方法もあると述べられています。最後に、伝道者が日常生活の不条理や不合理を取り上げており、神の存在や計画を信じているものの、具体的な支配原理や計画については知ることができないのです。

コヘレトには、人生全般の判断が「空の空、すべては空」と述べられていますが、ここで言われている「空」は人生が無意味であることを意味しているわけではなく、人生の問題を解決する神のかぎを提供していないという意味です。結論は、神を恐れ、神の命令に従うことで、神はすべての行いを審判するというものです。この文章では、伝道者が人生の意味を探求し、神だけがそのかぎを持っていることを認め、日々の生活で神を信じ、神の栄光を表すことが重要なのです。

アウトラインは以下のようになります。

1.序言,表題と主題 1:1-2

2.日の下のすべては空 1:3-2:26

(1)自然と歴史(1:3-11)

(2)知恵(1:12-18)

(3)快楽(2:1-11)

(4)知恵や労苦の実を無にする死の力(2:12-23)

(5)神への信頼による歩み(2:24-26)

3.神の御旨に生きる 3:1-22

(1)神の計画の時(3:1-9)

(2)神が与える生き方(3:10-15)

(3)死の結末(3:16-21)

(4)現世で最善に生きる(3:22)

4.人間関係の善悪 4:1-16

(1)圧制と嫉妬(4:1-5)

(2沁の平安を求めよ(4:6)

(3)孤独のむなしさ(4:7-8)

(4)友との交わりの祝福(4:9-12)

(5汪と民衆(4:13-16)

5.真の礼拝 5:1-7

6・富のむなしさ 5:8-6:12

(1)富める者の失望(5:8-17)

(2)神の賜物に満足する(5:18-20)

(3)富は満足を与えない(6:1-12)

7.知恵のことば 7:1-8:7

(1)知恵ある者の歩み(7:1-14)

(2冲庸(7:15-22)

(3)知恵を得る困難(7:23-29)

(4)権威への服従(8:1-7)

8.死の問題 8:8-9:16

(1)善人にも悪人にも及ぶ死(8:8-9:3)

(2)死に備えて生きる(9:16)

9.知恵ある者と愚か者 9:17-10:20

(1)知恵の力(9:17-18)

(2)愚か者はいのちを滅ぼす(10:1-4)

3)人生の矛盾と知恵の力(10:5-11

4)愚か者のことば(10:12-15

5)国の幸いのため(10:16-20

10.未来に備えて 11:1-12:8

1)不確定な未来のため(11:1-8

2)若い時に神を覚えよ(11:9-12:8

11.結論一知恵ある者のことばを聞け 12:9-14

コヘレト(「伝道者」または「集める人」を意味するヘブライ語の言葉から)は、ヘブライ聖書(旧約聖書)の箴言文学の一部であり、『コヘレトの言葉』または『伝道者の書』とも呼ばれます。この書物は、人生の意味や価値に関する疑問と哲学的な省察を扱っており、その中心的なテーマは、人生の虚しさ(ヘブライ語で「ハベル」)とそれに対処する方法です。

コヘレトは、伝統的にソロモン王の著作とされていますが、その著者については確かなことは分かっていません。書物の内容は、作者が経験や観察に基づいて人生についての知恵を探求し、その過程で苦悩や喜び、成功や失敗を経験していることを示しています。

コヘレトの主要なテーマは以下の通りです。

  1. 人生の虚しさ: コヘレトは、人生のさまざまな側面が空虚であることを強調しています。富や権力、知恵、楽しみなどの追求は、最終的には満足感をもたらさず、人生の真の目的や意味を見つけることができないと述べています。
  2. 人間の努力の限界: コヘレトは、人間の努力が結局のところ無意味であることを示しています。人々が努力しても、彼らの努力は最終的には死によって無に帰すため、永遠の価値を持つことはありません。
  3. 神の摂理: コヘレトは、人生のすべての出来事が神の摂理の下にあることを強調しています。神はすべてのことを成し遂げ、時を決定しており、人間はその神の計画を完全に理解することはできません。
  4. 神を敬い、その戒めに従うことの重要性: コヘレトは、人生の真の目的を見つけるための解決策として、神を敬い、その戒めに従うことを提案しています。これによって、人々は虚しさから逃れ、神の恵みと祝福を受けることができます。コヘレトは、人生を楽しむことも重要であり、神が私たちに与えた日々の恵みを喜ぶように勧めています。
  1. 時の価値と適切な行動: コヘレトでは、すべてのことには適切な時があることが説明されています。喜び、悲しみ、誕生、死、戦争、平和など、さまざまな状況や出来事がそれぞれの時に適切であるとされています。この哲学は、人々が現在の状況を受け入れ、その中で神が与える恵みを見つけることを助けることを意味します。
  2. 知恵と愚かさ: コヘレトは、知恵と愚かさの違いを強調しています。知恵ある人は、神を敬い、神の計画に従い、他者に対して慈悲深く行動することを学びます。一方、愚かな人は、自分の欲望に追従し、神の戒めを無視し、最終的には自分自身の破滅を招くことになります。

コヘレトは、人生の真の目的や意味を理解する上で非常に重要な書物です。虚しさや人間の努力の限界を認識し、神に従うことによって、私たちは人生の喜びや充実感を見つけることができます。コヘレトから学ぶことは、私たちが自分の人生においてどのように価値や意義を見出すことができるかを示してくれます。また、神を敬い、神の恵みを受け入れることの重要性を理解することを助けます。コヘレトの教えは、私たちの信仰生活において深い洞察をもたらし、人生の真の目的を見つけるためのガイダンスを提供してくれます。

  1. 富と貧困の虚しさ: コヘレトでは、富を追求することの空しさが語られています。富は、一時的な満足感をもたらすかもしれませんが、最終的には持ち主を不幸にすることがあります。貧困もまた、人生の苦しみを引き起こすことがあります。コヘレトは、富と貧困の両方が虚しいと認識し、神を敬い、彼の計画に従うことが最も重要であることを示しています。
  2. 友情と共同体の価値: コヘレトは、友情と共同体の重要性を強調しています。互いに支え合い、助け合うことによって、人々は困難に立ち向かい、喜びを分かち合うことができます。このことは、孤立や自己中心主義の限界を示しており、人々が互いに愛し、支え合う共同体において神の愛を実践することが重要であることを示唆しています。
  3. 自己省察と悔い改め: コヘレトは、自己省察と悔い改めの重要性を示しています。私たちが自分自身を省み、自分の行いや選択に対して責任を取ることで、神との関係を修復し、人生の真の目的を見つけることができます。
  4. 人生の季節と変化への適応: コヘレトは、人生にはさまざまな季節があることを認めています。喜びと悲しみ、成長と衰退、勝利と敗北など、人生のさまざまな段階で経験されるこれらの変化を受け入れることが重要です。これにより、私たちは神の摂理を信頼し、どのような状況にも適応する力を持つことができます。
  1. 勤勉と怠惰の比較: コヘレトは、勤勉と怠惰の両方について触れています。勤勉な人は、神から与えられた才能と恵みを活用し、自分自身と他者のために良い結果を生み出すことができます。一方、怠惰な人は、機会を逃し、無益な人生を送ることになります。この教えは、私たちが適切な努力を行い、人生の目的を追求する重要性を示しています。
  2. 誠実さと虚偽: コヘレトでは、誠実さと虚偽の価値についても言及されています。誠実で真実な言葉や行動は、信頼と尊敬を築くことができますが、虚偽や欺瞞は最終的に破滅を招くことがあります。この教えは、私たちが誠実さと真実を追求し、他者との関係で信頼性を高めることが重要であることを示しています。
  3. 謙遜と高慢: コヘレトは謙遜の価値を強調し、高慢や傲慢が失敗や破滅につながることを示しています。謙遜な人は、自分自身の限界を認識し、他者から学ぶ意欲があります。一方、高慢な人は、自分がすべてを知っていると考え、他者の意見や助言を聞くことを拒みます。謙遜な心を持つことは、神の教えに従い、他者と協力することができるようになる重要な要素です。
  4. 慈悲と正義: コヘレトは、慈悲と正義の価値を説いています。慈悲深い行いや正義を追求することは、人々が互いに愛し、支え合う共同体を築くために不可欠です。